『やめられない ギャンブル地獄からの生還』を読んで
読み始めから、読み終わりまでギャンブル依存症の怖さが詰め込まれている本でした。ギャンブル依存症に対して周囲の理解はまだまだ得られづらいです。「自己責任で依存症になってしまったのだから、迷惑かけないように辞めればいいだけ。」そのように考えてしまう人も多いと思います。
一見正しそうな意見ですが、ギャンブル依存症は病気なんです。しかも厄介なのは、独力で治せる病気じゃないことです。周囲の理解とサポートが不可欠で、それが得られないとますます悪化する傾向にあるものなのです。
この事実を知らないで、みんなが不幸になるサイクルを繰り返してしまう前に、ギャンブル依存症が病気であることを理解し、その病気を治すにはどういう対策が必要で、どういう対策は無意味なのかを学べるのが本書です。
とにかく読んでいて苦しい
とにかく依存症の体験談がリアルで読んでいて、苦しいものが多いです。
こうしていったんパチンコを再開してしまうと、のめり込むまでほんの数日でした。止めようと思っても三日ともちません。妊娠が分かってもお腹が大きくなっても通い続けました。p.25
学生時代にのめり込み、借金をし、母親の指輪を売ってまでパチンコを打ち続けた女性の体験談。周囲には通っていることがばれないまま、結婚を機にやめるも、3ヶ月でパチンコを再び始めてしまう。
きっかけはふとしたことで、気がつけばのめり込んでいる。自分自身でも、よくないことだと思っているんですが、始めるとそのことすら忘れてしまう。気がつけば、依存状態になっています。
その日、わたしは夫の目の前で、三通の誓約書を書かされました。いずれも、もうこれから絶対にパチンコはしませんという文面で、夫と息子、娘宛てでした。でもわたしはこうやって謝罪をしながらも、心の中ではパチンコがしたいと思っていたのです。p.32
40代女性、持病が見つかり、気落ちしている時にパチンコにはまる。どうしてもやめられず、誓約書を書いても、続けてしまい、夫の稼ぎだけでなく、息子のお金にまで手をつけてしまった。
誓約書や、約束、誓い、「やらない!」という意思、そんなものがあっても、それすらなかったことにしてしまうのが、依存症の怖いところです。周りの人間は、どうしても裏切られたように感じてしまい、サポートの手が途絶えてしまうことにつながりやすいです。孤独やストレスは高まり、ますます依存する方向へ進んでしまいます。
「正雄さん(私の名です)、あなたは苦しくはないですか」私を責める口調ではありません。私はしばらく黙ってから、「苦しいです」と答えました。涙がボロボロ溢れてきました。「パチンコがやめられないのです。」「これは病気ですよ。病気なら治療をしなければいけません。明日の朝、そっちに行きます。一緒に相談にいきましょう。会社は病休をとればすみます」p.62
営業マンになってからパチンコにはまる。のちに結婚するが、ずっとパチンコを続ける。子供が生まれるも、そんなことよりパチンコが頭にある。息子の誕生日も忘れ、パチンコにのめり込み、たくさん借金をする。父親に助けてもらうこと数度。妻は出て行く。妻に電話をかけたあと、妻の父から電話がかかってくる。
奥さんのお父さんだって、責めたい気持ちがあると思います。それを乗り越えてこんな言葉を出しているのだから凄みがあり、尊敬してしまいます。そして、そんな言葉だからこそ、涙が溢れてくるんですよね。
依存症を治すために一番難しいのは打ち明けることで、打ち明けてしまいさえすれば、状況は大きく改善の方向に向きやすいようです。(もちろん相手の理解は必要ですが)
どこに助けの手があるかわからないので、助けをもとめる続けることが大切なんでしょうが、悪化し続ける人はプライドや悪いことをしているという自覚が邪魔して助けを求めることができません。
自己責任から離れて考える
体験談をいくつも読んでいると、自己責任という言葉は、あなたは運が悪かった、と翻訳できるような気がしてきました。相手と向き合いたくないときに自己責任という言葉は都合が良いです。私も「それは自己責任やろ!」というふうに普段使いしています。
だけどみんながみんな、自己責任という言葉を振りかざしてしまうと、そこには希望も何もありません。 一度落ちれば二度と戻ってこれないことを意味してしまいます。
依存症は意志力ではなんともできません。意志力でなんとかできるものは、依存症では無いと言ったほうがいいかもしれません。依存症の前ではどのような決意も打ち砕かれてしまうのです。
依存症から脱するための環境づくりが必要で、それは本人一人では成し遂げられず、周りの理解とサポートが不可欠です。
自己責任は自己責任として、それとは別でサポートすることを頭に浮かべられるようになりたいですね。
援助しない援助
本人の借金は本人に返済させる。返済できないのであれば、債務整理をする。これが鉄則です。p.150
肩代わりして、今の生活を続けても、後々後悔するのは、その周りの人々のようです。現状を受け入れ、そこから再構築するよりほかにありません。現状を否定するためにまず借金返済のお金を援助し、依存症の問題を解消した気になっては問題は将来再発します。
援助しない援助というのが大事になってきます。本人が作ってしまった借金は、肩代わりせず本人に返済させる。それがどれだけ多額でも。
書籍によると、借金だけ返して依存症の治療は行わないケースがよくあり、依存症は治っていないため借金が再びできてしまうそうです。
さいごに
読んでいてなんども自分だってこうなっていてもおかしくなかったんだろうな、と何度も苦しくなりました。本当にただ運が良かったというより他にありません。
ギャンブル依存症に限らずいつ自分の身の回りで、苦しい思いをしている人に気づくかわかりませんが、そんな時自分の想像で相手を語らず、しっかり知識をつけようとする姿勢を意識したいと思いました。