『キーエンス解剖 最強企業のメカニズム』を読んで
個の本を読み終わって最初に感じたのは、エンジニアこそ読むべき本だということです。システムの開発、運営に携わる人こそ、そのシステムのユーザー、システムを使うことで得られる価値を理解し、それを実現するための取り組みを行うべきだと感じました。
顧客に価値を提供するために技術を磨き続ける、当たり前だけど忘れてしまいがちなことを改めて思い出させてくれる本でした。
キーエンスの特徴
キーエンスは、50%を超える売上高営業利益率を誇っています。一般的な製造業の平均が5%程度であることを考えると、その高さは際立っています。なぜキーエンスはこれほどまでに高い利益率を維持できるのでしょうか。本書を読んでみるとその秘密は、原価に対する付加価値の創造にあるようです。
付加価値をいかに高めるか
キーエンスは、製品の付加価値を高めるために、さまざまな取り組みを行っています。
データ収集と活用
まず、データ収集とその活用です。
営業を中心として意味のあるデータを蓄積し、それを活用することで、顧客のニーズに合った製品を提供しています。データが重要だというのはどの業界でも認識されていますが、ただデータをストックしているだけでは意味がありません。また、データの収集方法によっては、無価値なデータ群が蓄積されてしまいます。
その点キーエンスでは、内部監査が行われているようで、実際とは異なる不正な業務データがないかチェックされています。
ユーザー視点
また、ユーザー視点を突き詰め、
- 即日即納
- すぐに試作品を提供
- 誰でも使える製品開発
など、他社にない強みを持っています。
営業活動
さらに、営業活動においても、準備、数をかけた試行錯誤、情報共有といった取り組みを行っています。
習慣的なロープレ、翌日行う予定のプレゼンの準備、電話や営業数を増やすことによる試行錯誤、各営業の準備や提案内容の共有、ユーザーの困り事や営業が必要だと感じている機能の共有など、きめ細やかな活動を続けています。
ただ、なぜキーエンスがこのような体制を継続できているのかは、本書を読んでもなんとも分からないというのが正直なところです。本書に書かれているようなことを他の企業が実行したからといって、すぐに改善することはないですし、場合によっては形骸化してしまうことも考えられます。
そもそも給与の面や、つらいながらもやりがいのある業務を続けられる人間が多く集まっているのが大きいとは思います。いずれにせよ、キーエンスの高い営業利益率の秘密は、付加価値の創造と営業活動にあるようです。製造業の会社がこれほどまでに高い利益率を上げているのは、非常に興味深い事例だと言えるでしょう。
感想
なにか個人開発の参考になればと読み始めたこの本ですが、よりユーザー目線で、ユーザーと対話的に開発を行っていきたいと思わされました。どうも技術的な満足感を重視しすぎていたようです。
使ってもらって、使ってもらった人に価値を感じてもらって、その結果として利益を得る。その価値のために必要であれば、技術的に複雑なことをやる。技術だけであれば、個人で満足できますからね。
あなたもぜひ、この本を読んで、自分のビジネスに活かしてみてください。